NAFLD/NASHになるメカニズムについて教えてください
肝臓は、腸で消化・吸収したさまざまな栄養素を取り込んで分解したり新たに合成「したりして、バランスよく全身に供給する大事な役割を担っています。食事でとった糖分は、通常はグリコーゲンとして肝臓に一時的に貯蔵されますが、過剰な糖分は中性脂肪に変換されて肝臓にたまりす。食事で余分にとった脂肪分はもちろんのこと、蛋白質が分解されてできるアミノ酸も過剰なぶんは脂質に変換されます。
食べ過ぎや運動不足などのために食事でとったカロリーが消費量を上回ると、肝臓で中性脂肪が多く作られ、脂肪肝となります。
また、肥満の人では血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きがわるくなり(これを“インスリン抵抗性”といいます)、このことによっても肝臓で中性脂肪をたくさん作るように促されます。
一方、同じ食事や運動をしていても、太りやすい人とそうでない人がいるように、肝臓への脂肪のたまりやすさも体質によって異なります。最近の研究では、脂肪肝になりやすい遺伝的素因として、「PNPLA3*1」などの遺伝子の型が関係していることがわかってきました。また、栄養障害による極度のやせや、医薬品の副作用などで生じる脂肪肝もあります。脂肪肝になると、過剰な栄養素を分解してエネルギーに変える(燃焼する)ときに、活性酸素などの有害な物質が多くできる“酸化ストレス”という状態を引き起こし、肝細胞が傷ついてしまいます。このため、NASHの患者さんでは、酸化ストレスを防ぐ抗酸化剤が治療に有効だと考えられています。
また、NASHには腸内細菌のバランスの変化や免疫系の反応なども影響しており、肝臓で炎症が強まって線維が増えることで肝硬変へと進行する過程だけでなく、肝がんを発症するステップにも重要な役割を果たしていることが明らかにされつつあります。
(*1)PNPLA3の遺伝子型は保険医療では測定できません。
出典:
日本消化器病学会 編,日本肝臓学会 協力,患者さんとご家族のためのNAFLD/NASHガイド 2016 https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/pdf/04_nafldr.pdf (2018年12月3日閲覧) Q4