日常生活で注意することはありますか?
ウイルス性慢性肝炎の患者さんがお酒を飲むと、肝がんができる確率が高くなるという報告があります。飲酒を避けることは、病気を悪化させないために重要です。喫煙の肝がん発症への影響は完全には否定できません。喫煙は避けることが望ましいと思われます。
食事について特別に注意する必要はありませんが、栄養のバランスを考えて規則正しくとることが大切です。また、肝臓に鉄が多くたまっている人は鉄分の多い食事はひかえる必要があります。むくみや腹水がある方は、塩分摂取も制限した方が良いでしょう。軽い運動や散歩は構いません。そのために病気が悪化することはありません。
出典:
日本肝臓学会発行冊子「肝臓病の理解のために」2015,日本肝臓学会
https://www.jsh.or.jp/citizens/booklet/(2018年12月3日閲覧)
1 慢性肝炎、肝硬変 P7
日常生活
運動と安静
病人には安静が強調されてきましたが、慢性疾患では適度な運動による筋肉の維持も大切です。しかし、肝硬変の患者さんでは、重い運動を急激に行うよりも歩行など軽度の運動から始めること、そして何よりも継続が大切です。歩行運動により、生活の活動範囲が広がりQOL(生活の質)が向上することも望まれます。
歩行時間は30分くらいを目安にし、軽く汗をかく程度の速さならまず問題ありません。長期間体を動かしていないときには徐々に運動量を増やします。心地よい疲れを感じる程度を目安にしてください。翌朝起床時に疲労感が残っているようなら過剰です。
体がだるいと感じたときは無理をせず、休むことも大切です。体調が戻れば運動を再開し、継続してください。過剰な運動は禁物です。
黄疸、腹水やむくみ、肝性脳症(肝臓の機能低下による意識障害)などのある進んだ肝硬変では、原則的に運動は控えます。柔軟体操くらいにしておきましょう。
食後は消化と吸収のために、胃腸や肝臓が活発に働いている時間です。食後1~2時間は楽な姿勢でゆったりとしてください。
入浴や運動後は静かにゆったりとする時間を持ちましょう。安静のとり方は症状や病期に関係しますので担当医に相談してください。
睡眠
規則正しく睡眠をとりましょう。朝と夜が逆転するのは、肝性脳症の症状のひとつです。昼寝をするときには、長く寝すぎないように注意しましょう。
催眠剤によっては肝臓での分解が遅くなるため、眠気が翌朝にまで長引くことがあります。
感染防止
感染の予防のためには下記のような注意をします。このような注意さえ守れば、感染を過度に心配する必要はありません。
肝炎ウイルス感染予防のために
・輸血はできるだけしない
・出血時、血液付着物の処置は自分で行う
廃棄、焼却、水洗、消毒
・分泌物(唾液、鼻水)の始末と手洗いの励行
・日用品の専用:カミソリ、タオル、歯ブラシなど
・乳幼児との接触は特に問題ない
食べ物の口移しはしない
・予防接種
配偶者、子ども、高危険の職場
一般的な生活ではほとんど感染しない
C型ウイルスでは夫婦間の感染も極めてまれ
旅行
肝硬変でも、腹水や浮腫、黄疸、脳症のない時期であれば可能です。無理のないスケジュールで、ゆったりとしたペースで行いましょう。生ものを食べるのは慎重にし、薬(胃腸薬や風邪薬は主治医と相談して準備を)と健康保険証を忘れないように。
服薬
肝硬変では薬の分解力が落ちているため、多種類の薬を大量にのむと思わぬ副作用が出ます。複数の医師から薬をもらうときには、今のんでいる薬をみせて主治医とよく相談しましょう。
定期的な通院と検査
肝硬変では採血や画像検査など定期的な検査が欠かせません。必ず主治医を決めて定期的に受診してください。
出典:
肝臓にやさしい食事と生活 P2,3
監修:
慶應義塾大学看護医療学部 教授 加藤眞三
慶應義塾大学病院 食養管理室 主任 大木いづみ