手術
図:甲状腺がん切除手術の方法
甲状腺外科研究会編「甲状腺癌取扱い規約 2005年9月(第6版)」(金原出版)より改変
手術はがんの位置や大きさ、転移の有無などにより3種類の切除方法があります(図)。
甲状腺がんの手術では、切除範囲が大きいほど甲状腺機能の低下(甲状腺分泌ホルモンの不足)、副甲状腺機能の低下(血液中カルシウムの不足)、反回神経の麻痺(声のかすれ)など、さまざまな合併症を伴う可能性があります。合併症は薬で改善させることもあります。
葉切除 : | がんが右葉・左葉のどちらか片方にある場合に行われる切除法で、甲状腺の機能を残すことが可能です。 |
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亜全摘 : | 一部を残して大半を摘出する切除法。一部でも甲状腺が残っていれば、体に必要なホルモンをつくることができる可能性があります。 |
全摘 : | 甲状腺のすべてを摘出する切除法。がんが進行して、リンパ節まで転移している場合はリンパ節も切除します(リンパ節郭清)。 |
甲状腺ホルモン療法(TSH抑制療法)
甲状腺刺激ホルモン(TSH)は脳下垂体から分泌され、甲状腺ホルモン分泌を促進させるホルモンですが、甲状腺がん細胞の増殖も刺激してしまう可能性があります。そこで、手術後、甲状腺ホルモン剤を投与してTSHの分泌を低下させ(TSH抑制療法)、乳頭がんや濾胞がんの再発を予防する場合があります。
放射性ヨード内用療法
乳頭がんまたは濾胞がんの全摘出後のアブレーション(残存する正常組織を除去)や放射性ヨード内用療法(放射線内照射)が行われます。この治療法はヨードが体内では甲状腺の濾胞細胞にだけ取り込まれるという性質を応用したものです。放射性ヨードはカプセルに入れて内服すると甲状腺がんに取り込まれ、そこで放射能を出してがん細胞を攻撃します。
また、放射性ヨード内服後に全身シンチグラフィを行うと、放射性ヨードが全身のどこに取り込まれたかがわかり、転移の有無やヨード内用両方の効果を確認することができます 。
化学療法(抗がん薬治療)
抗がん薬により、がん細胞を殺す方法です。ただし、正常な細胞も同時に攻撃するので、副作用も多く認められます。標準治療となる抗がん薬はないのが現状です。