食事療法の考え方

バランスの良い食事の指標として、食事バランスガイドがあります。また、重要なポイントは次の4つです。

①穀物を十分にとり、未精製のものが望ましい

穀物には、エネルギー源である炭水化物が含まれます。そして、未精製の穀物にはビタミン、ミネラルや食物繊維も豊富に含まれています。進行した肝硬変では、肝臓で血糖を調節する力が落ちていますが、未精製の穀物は、グリセミックインデックス(GI)値*も低いため、血糖の急激な上昇を防ぎます。

*グリセミックインデックス(GI)値:食後の血糖値の上昇反応を数値で示した値

食事バランスガイドについて

②野菜や果物、海藻を積極的にとる

野菜にはビタミンや食物繊維が豊富です。食物繊維は便通を良くする作用があり、腸内細菌を良い方向へと変化させます。便通や腸内細菌の変化は腸内からのアンモニアの吸収をおさえます。サラダなどの生野菜はたくさん食べているようで、実は十分な量がとれません。また、トマト、レタス、キュウリなどは食物繊維が少ないので、豆類や根菜類などで調理したものも十分にとってください。
輸入されたり遠方からの野菜や果物には農薬や殺虫剤、防腐剤などが含まれていることが多いため、近くで採れた新鮮なものが望ましいです。季節はずれの野菜や果物ではなく、旬のものをとりましょう。
海藻やきのこ類には、食物繊維やミネラルが多いので積極的にとりましょう。

野菜や果物、海藻を積極的にとる

③たんぱく質は良質のものを必要量(1日あたり1.0~1.2g/kg体重)にする

肉類のとりすぎを避けて、豆類や野菜、大豆製品、魚類、鶏肉などから良質のたんぱく質を適当量とります。

④脂肪分を控えること、特に過酸化した脂肪を少なくする

現代の食生活では脂肪の多い食事が問題です。脂肪をとりすぎないためには、乳製品や肉類なども控え目にします。古くなり劣化した脂肪は過酸化脂質と呼ばれ、肝臓にとっても負担となります。特に開封して日が経ち、日光にさらされていた揚げもの、ポテトチップなどの菓子類などは避けましょう。

〈食事療法のポイント〉

・高エネルギー食、高たんぱく食にならないように
脂肪肝やアンモニアが高くなる原因となります。また、結果的に炭水化物や食物繊維の量が少なくなります。
・1日3食を規則的に
肝臓に糖分をグリコーゲンとして貯留する力の弱くなった人では、回数を多く規則的にとることが大切です。
・よくかんで食べる
かむことは、消化を良くします。また、食道静脈瘤などは傷つきやすいため、よくかんでやわらかくして食べることが望ましいのです。
・腹八分目を目安に
・食品は全体を食べるようにする(精製しない穀物、大根の葉、魚の頭など)
・深夜に消化の悪いものをとらない
肝硬変で栄養状態の悪い人では、就寝前にも炭水化物を中心にエネルギーを補うことがすすめられます。しかし、深夜に脂肪分の多い消化の悪いものをとると、胃腸に負担をかけます。
・食後1時間はお風呂に入らない

出典:
肝臓にやさしい食事と生活 P6,7
監修:
慶應義塾大学看護医療学部 教授 加藤眞三
慶應義塾大学病院 食養管理室 主任 大木いづみ

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