合併症別の食事療法

①合併症がない肝硬変(代償期)の食事

肝硬変でも腹水や黄疸、脳症など合併症のない時期、代償期には、特に食事の制限はなく、バランスの良い食事を適量にという一般的な注意で十分です。

合併症がない肝硬変(代償期)の食事

外食やコンビニのお弁当などの注意

外食ではどうしても揚げものや塩分が多くなりがちです。かまぼこやソーセージなどの加工食品・保存食品には塩分が多く含まれています。これらのものを少なくすると同時に、野菜類が不足しないように意識してとりましょう。
献立例へ

②高アンモニア血症(肝性脳症)のある時期の食事

高たんぱく食では血液中のアンモニアが高くなるため、肝性脳症が出た後には、たんぱく質の制限が必要となります。脳症のある期間は禁食とし、症状が落ち着いたら1日あたり0.5g/kg体重のたんぱく食から開始して、1g/kg体重まで徐々に増やします。血液中のアルブミンやBCAAが低下していればBCAA製剤で補います。
肉類を食べすぎると脳症が出やすくなるため、たんぱく質は植物性を主体にします。便通を良くするためにも食物繊維を十分にとることがすすめられます。便秘にならないように便秘薬の服用により調整します。
献立例へ

③糖尿病を合併した場合の食事

肝硬変患者さんでは、肝臓での糖の調節力が低下するために肝性糖尿病となります。血糖は食後に高くなり、空腹時には低いことが特徴です。通常の糖尿病では少なくなっているインスリンはむしろ過剰に分泌されており、インスリンに対する反応が悪いためにおきるのです。
食後の血糖を高くしないためには、一度に大量に食べないこと、ブドウ糖の吸収の良すぎる食べ物(砂糖、菓子類、果物類)の食べすぎを避けるなどの注意が必要です。また、空腹時間を長くしないこと、少量ずつ頻回にとることも血糖を安定させるためには有効です。
献立例へ

糖尿病を合併した場合の食事

④腹水やむくみのある時期の食事

腹水やむくみのある時期には、1日あたり5~6g程度に塩分制限をします。それでもむくみが取れないときには、利尿剤を追加します。水分の摂取は通常は制限しませんが、腹水やむくみが強く出て、塩分の制限や利尿剤でコントロールできないときには、水分の摂取を1日500mL程度までに制限します。このような時期にはあまり体に無理をかけず、運動も柔軟程度にします。
血液中のアルブミンや分岐鎖アミノ酸が低下していれば、BCAA製剤で補います。

腹水やむくみのある時期の食事

⑤摂食不良などで栄養状態の悪い時期の食事

栄養状態の悪い時期には、たんぱく質を1日あたり1.2~1.5g/kg体重とし、BCAAを多く含む栄養剤を補給します。食事が十分とれるようであれば、BCAA製剤に移行します。

⑥食道静脈瘤のある時期の食事

食道静脈瘤がある時期には、刺激の強いものや硬い食べものは避けてください。また、よくかんで食べましょう。

出典:
肝臓にやさしい食事と生活 P7,8
監修:
慶應義塾大学看護医療学部 教授 加藤眞三
慶應義塾大学病院 食養管理室 主任 大木いづみ

次のページへ
前のページへ

メニュー